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【人の感覚は対数】

「対数」っていうと、何か高校の数学の授業の時に勉強した日常生活に全然関係ないアレかー、と感じる方も多いと思います。数学のあまり好きで ない方には、現実社会で使いみちない無用の長物、作為的に作られた概念などと感じられたと思います。日常の最大の関心事のひとつのオカネ という数字にも、テレビ番組の視聴率という数字にも、選挙の勝敗を決める数字にも、対数なんていう概念は出てきません。それでは、私たちの 身近な周囲には対数の概念が活躍する数の世界なんて本当にあるのでしょうか。

私は子供のときのあるとき、えっ!!、身の回りはほとんど対数なんだ!と気づいて、興奮して部屋の中を歩き回ったという経験がありました。人が感じる「感覚」は、(私の知っている限り)全て対数なんだと知ったんです。対数でない(ここでは1,2,3,4,5・・・という数の並びの概念をリニアと 呼ぶことにしましょう)感覚なんて、無いんです。

そもそも、感覚がリニアであるとか対数であるとは、どういうことなんでしょうか。
例として、人がある物理量(音圧とか光度とか)を体感して、脳の中にその物理量を感じて認知(音の強さ、明るさなど)するという場面を考えて見 ます。
ここで、物理量が0,1,2,3,4,5,6,7,8,9・・・・と大きくなったとしましょう。その時人はその刺激を感じ取って、刺激が徐々に大きくなったと感じます。し かし、この感じる刺激の強さは同じように0,1,2,3,4,5,6,7,8,9・・・とはなりません。それは物理量の数字の大きさによって変化の割合が異なるから です。数字が小さいうちは変化の割合が顕著です。例えば1→2の変化は2倍です。ところが数字の大きい場合例えば8→9に変化するときは、 1割程度しか変化しません。さらにもっと数字が大きいところでは、9999→10000への変化は、確かに同じプラス1の変化をしていますが割合は0 .01%しか変化しません。数字の大きさによってプラス1ずつ順に大きくなっていっても、その影響はどんどん目減りしてしまって、認知される感覚 量が一定量ずつ大きくはならないわけです。

それでは、順に+1ずつ大きくするのではなく、物理量を隣との割合が一定になるように強くしてみます。例えば物理量を1,2,4,8,16,32,6 4,128、・・・・・のようにします。すると数字が小さいときの1→2への変化は2倍、数字が大きくなって64→128への変化も同じく2倍です。数字 が小さいときも大きいときも、同様に変化の割合は一定です。刺激として与えられる物理量が一定の割合で増加するなら、認知される感覚量も 一定な値ずつ大きくなるのではないでしょうか。人間は「絶対の目盛」で環境を計測しているのではなく、「相対の目盛」を用いて、2つのものを比 較してその大きさを認識しているため、2者の物理量の比が一定であると、同様な大小関係と判断するのだと思います。

リニア的とは:  物理的刺激が1,2,3,4,5,6,7,8・・・   →  認知される感覚量が1,2,3,4,5,6,7,8・・・・
対数的とは:   物理的刺激が1,2,4,8,16,32、64・・・   →  認知される感覚量が1,2,3,4,5,6,7,8・・・・

と(造語的ですが)定義することにしましょう。言葉で言えば、リニア的とは等差数列的な物理的刺激を等差数列的な感覚量として認知する、一方 、対数的とは等比数列的な物理的刺激を等差数列的な感覚量として認知すると言えますね。

認知される感覚を対数的にすることによって、いろいろな生物としていろいろなメリットが生まれます。
◆感覚量のダイナミックレンジを非常に大きくカバーできることです。
◆記憶する情報量を小さくできます
◆物理量の数字の大きさによらず情報精度(有効数字)を無駄なく確保できます。
◆単純な規則で、数値情報をコード化できます。
このようなメリットは、限られた脳の記憶資源を有効かつ高速に活用するための重要な効果をもたらしてくれるのではないでしょうか。


対数化すること感覚にジャストフィットする例は、周辺に数多くあります。音楽や音の関係では、音の強さ、音の高さがそうです。その他にも、光の強さ、酸やアルカリの強さ、甘さ辛さ、星の明るさ、地震の強さ・・・・などなど、極小さなエネルギーから膨大なエネルギーまでを、肌感覚を損なわないで分かりやすく数値化してくれるのが、対数ですね。

具体的な話は、またの機会に。。。。。


【へびの足】
この対数的な物理量を記述する単位の1つとして、dB(デシベル)という単位が使われます。これは
   物理量が1,10,100,1000,10000,100000・・・・  → 認知される感覚量 0,10,20,30,40,50,・・・・
と、物理量側の底を10として、また感覚量側を10毎にして、使いやすくした表記です。

物理量側の基準の「1」にあたる基準量をそれぞれの世界の都合のよい基準量を用いています。また、物理量はなるだけ普遍的な量を対象とした
いので、エネルギーの次元を基本とすることが多いようです。このため、2乗してエネルギーの次元になる物理量、例えば音圧とか電圧などは、
Log(X^2)の2が外に出て係数に2倍がついてきますので、0,20,40,60,80・・・となります。